IT経営実践事例集

経営戦略・経営改革・業務改革を実践し、
IT経営を実現した事例を紹介します。

「社長の思いを社員にしっかり伝えよう!」自信を持った三代目社長

■どん底の業績から這い上がる決意!
「人間、どん底まで追い詰められないと覚悟できないかもしれない・・」三代目社長は最悪の業績となった2年前を振り返る。当社は、建築用部材の老舗・中部地区におけるトップメーカーとして成長してきたが、三代目社長となってからの業績は振るわず、特にバブル崩壊による建築業界の不振のあおりで2003年末の業績はどん底状態となっていた。業績の低迷は新社長の手腕のせいと言われてはとても悔しくてやりきれない。「今、やらないと後がない!!」三代目社長はまず自分自信を変えることによってこのどん底から這い上がる覚悟をした。

■自分自信を変える努力
二代目から30代半ばで社長を引き継いで8年間、これといった自己研鑚をやってきたわけでもなく、まわり(会社を実質的に動かしている先代の幹部)に気遣い、お伺いを立てながら社長業を自信なくこなしてきたが、これでは社員がついてこない。三代目社長は、奮起一転、まず「知力」、経営の知識・知恵を得るため本を読むことから始めた。今まで殆ど読んだことがなかった本を、毎月2〜3冊、1年間で30〜40冊を読破するとともに、経営者セミナーにも積極的に参加した。次に「体力」、太りすぎの体質を変えるために食事コントロールと毎日1時間以上のウオ−キングを1年間やり続けた。こうした努力によって、社長としての自分に自信を持つことができた。

■ITSSP事業への参画・IT活用型経営革新モデル事業の採択
取引銀行の紹介で名古屋ソフトウェアセンターのITSSP事業(計画書策定コンサルティング)へ参画、ITコーディネータによるコンサルテーションの成果として戦略的情報化企画が提案され、これに基づいてIT活用型経営改革モデル事業に応募、みごとこの事業に採択された。この事業は、「商品の受注から生産・出荷までの各業務をICタグの活用によりトレーサビリティし、各工程の進捗状況を可視化、コントロールすることによって、顧客へ商品を安く、速く確実に提供し、且つ生産性を向上し高付加価値化を図る新基幹業務統合システムの開発」で、経営革新の目玉として全社を挙げて推進した。

■社長の思いを社員にしっかり伝える努力
社長の自己改革努力や積極的な経営姿勢は自然と社員に伝播するもので、社員の殆どが「近頃、社長は変わったな!」「会社は変わっていくな!」と感じることができた。しかし、社長の「どん底から這い上がる覚悟」や危機感、会社を改革して行こうとする経営ビジョンなどは、しっかりと伝える努力をしないと社員はなかなか理解してくれない。どんな会社でも、意外と大きなギャップを生じているのが一般的である。三代目社長は、自分の言葉で「経営理念」「会社方針」「年度重点目標」を会社方針書として、各グループの責任者で構成されるグループ会議で説明し合意形成、各グループ長は職場へ持ちかえり一般社員へ説明し合意形成するとともに、グループ別計画書を策定、これに基づき 各個人が年間目標を数値で立て、全社員を集め1日がかりで行う社員総会で発表するといった方法で、全社員の参画と理解を深めている。



■会社方針を社員の腹に落とす

ここでユニークなのは、会社方針書の1ページをさいて「用語解説」が記載されていることである。「会社方針をしっかり腹に落としてもらいたい!」当たり前に使われる言葉であっても、会社方針書に書かれた言葉を社長の理解した内容とするために、わざわざ「用語解説」ページを作ったのである。その一部を紹介すると・・
・モラル:倫理、道徳=人々が善悪をわきまえ正しい行為をなすために守り従わなければならない規範の総体
・モラール:目標を達成しようとする意欲や態度。士気。やる気。
・安心:不安や心配がないこと
・安全:損害・損傷を受ける恐れのない「安心」な状況のこと
・信頼:信じて頼る、頼られること
・誠実:偽りがなく真心が感じられること
・強調:利害の対立するものが力を合わせて事をなすこと
・優良:他に比べて優れていること
・ECO:エコノミー(economy)経済的・節約エコロジー(ecology)地球環境(人間と自然)で物質循環や社会状況の相互関係を考える科学
・3R:リデュース(reduce)資源の削減・原料・リユース(reuse)廃品の再利用、再使用・リサイクル(recycle)廃品の再資源化
・+1R:リフューズ(refuse)ゴミ化の拒絶
 


■利益目標倍増を達成!
こうした社長の自己改革努力や積極経営姿勢とともに、外部環境の好転(追い風)の後押しを引き寄せ、三代目社長の就任以来初めて利益目標に対して倍増の好業績を収めたが、社長は「あくまで運良く外部環境好転に遭遇したのであって、会社そのものの実力でなしたことでなく、やっと出発点だ!」との思いで気を引き締めて経営革新を継続して行こうとしている。自信のなかった三代目社長が、自分の思いを社員にしっかりと伝える自信を持った社長に変わって行くプロセスは、多くの二代目・三代目社長のお手本となる好事例である。



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